マスター、マスター。
映像を認識する目の造形をしたパネルが緑の色味を濃くしたり、薄くしたりしながらもう一度『マスター』と機械音で僕を呼ぶ。
それはほんの少し、喜んでいるようで呼ばれた僕は少しだけ嬉しくなって、しょうがないなという顔をして、僕お手製の機械銃のメンテナンスを中断して顔を上げ、ゴーグルを外した。
『見タコト無イ、オ花ガ沢山アル』
「花か~、花は僕詳しくないんだよな……」
丸いフォルムに、大きなサイズのホープが両手に摘んでいた花を見ながら僕はもう一度、うーん、と唸り両手を組む。目の前の花から更に上を視線をずらすと、表情が変わらないはずなのに、何処となくホープが何かを期待しているように見えた。
『アップデート? アップデートスル?』
「う……」
新しい街で、機工師の工房に寄って花図鑑のディスクを買えば済むことかもしれない。しれないのだけれども。
「……高いんだよなぁ。お前型古いし……」
『ソレハショウガナイ』
ショウガナイ。もう一度言葉を発したホープの緑のパネルは明かりが弱まり、次第に暗くなる。目に見えて分かるように落ち込むホープに思わず口をへの字に曲げ、指を指した。
「んな、あからさまに落ち込むなよ! 分かったよ、買ってやるよ!」
『ワーイ! マスター、大好キー!』
「その代わり、今日の晩御飯ハンバーグ定食だからな!」
『了解シマシタ』
財布の中身を見ながらチクショウと思いつつ、嬉しそうに鼻歌ならぬオルゴール音を鳴らすホープに「しょうがないなぁ」と僕は笑う。
出会ったのは最近だけど、僕らはまるで兄弟みたいだなと自分でも思うんだ。
え、どちらが兄かって、それは勿論僕だけどね。
「手のかかる弟だな」
『製造年カラ言ッテボクガ兄ダヨ』
「んだとオラー!」
『手ノカカル弟ダケド、マスター頼リニシテルヨ』
「当然だコンチクショー」
ゴンゴンとホープの巨体を叩いても、音が辺りに響くだけ。
ホープと一緒に旅をするのが楽しい。話せば何かが返ってくる。
どんな事を目的として造られたかは不明で、このご時世に戦闘機が全く付いてないし、所々ポンコツだけど。
僕らは友達なようで兄弟のような、なんとも言えない間柄だ。
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