少年とロボット+少女


 ぽかぽかと暖かい日差しの中、睨み合う四つの目。

旅の途中。昼食のため、少し大きな木の下でクリームシチューを煮込んでいる中、目の前で繰り広げられている光景をおたまをぐるぐると回しながら僕は欠伸を一つ。

 

「まだ睨み合ってるのー? もうご飯できるよー?」

 

 もう一度、大きな欠伸に涙を零しながら、睨みあっている一人と一体に声をかけた。

 

「……本当は、中に誰か入ってるんじゃないの?」

『中ノ人ナンテ居マセン』

 

 両足を放り投げ、座り込んでいるホープの目の前に腰を下ろし、ホープの巨体を見上げている彼女の名は、アーシェア=ノーブル。

三大陸のうちのひとつである、剣技の国エストック出身の彼女は背中に自身の身長と差ほど変わらない大剣を背負っている。

 うんうん、と唸り首を傾げて未だに疑っている様子のアーシェアはホープの胴体を右手でカンカンとノックするように叩いた。

 

「なんで戦闘機能無いの? なんでそんなに丸いわけ? なんでそんなにカタコトなの? 何時の時代に何が目的で造られたわけ? なんで……」

 

 次々に出てくるアーシェアの言葉。

 ガタガタと震えるホープの表情が変わらないのに、今にも泣き出してしまいそうだ。

 

『マ、マスター!!』

「あ、待て!! 質問に答えなさい!」

 

 わーん! と目のからオイルを零し、ガシャンガシャン音をたて僕の周りを走るホープ。その後ろを追いかけるアーシェアの形相はとても怖かった。

 

『ヤダー! 怖イヨー!!』

「こらーー! 待てー!」

『助ケテ、マスター』

 

 ホープの願いにふるふると首を横に振り、ただ解体されないよう無事を祈る事しか出来なかった。

 

「健闘を祈る!」

『ヒドイー!』

 

 ガシャンガシャンと音を立て、森の中に逃げていくホープを追いかけていったアーシェアを見送りながら、出来たてのクリームシチューと前回寄った街で買ったクロワッサンを皿に乗せて、クリームシチューをぱくりと口に入れた。

 

「うん、我ながらいい出来だ」

 

 森の奥から聞こえてくる、不自然な機械音を聞かないフリをして、クロワッサンを噛み千切った。